シェヘラザード、静かにお休み
泥の浮かぶ川の水で顔を洗ったシーラにとって、塵も埃も古さだってあって困るものではなかった。
すっかり目を輝かせたシーラを見て、ルイスは自分が初めてここに入ったときの感動を思い出していた。
父親に案内されて、ここに入り浸ったな。
「物語だけじゃなくて、研究の本なんかも置いてあるわ」
ざっと見ただけでそれを見分けたシーラが振り向く。
「曾祖父さんのものだ。学者だったから、使わなくなったものをここにも置いていったらしい」
「読んで良い?」
「その為に見せた」
「ありがとう!」
既に手に取りたい一冊目が決まっていたらしく、シーラは分厚い本を手に取った。