シェヘラザード、静かにお休み

振り向いて尋ねる。イーサンはその顔を見て少し沈黙した後、

「シェヘラザードに似てますね、名前は」

「千夜一夜物語の?」

「そうです。生きながらえる為に話を紡いだ」

ルイスはその薄ら笑いをじっと見ていた。

トントンとノックが聞こえて、ルイスは立ち上がる。扉を開けるとシーラが紙袋を持って現れた。

「はい、これ。無銭飲食を捕まえてくれたお礼ですって」

疲れた顔をしたシーラは紙袋をルイスへ渡す。中からはパンの香ばしい香りがした。

部屋へ入ったシーラと先に目が合ったのはイーサンの方。
何かを探るような視線に、きゅっと青い目を細めて見せた。

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