シェヘラザード、静かにお休み

青い瞳が一瞬伏せられた。

「もしかして昔はいたことがあるとか」

ピーン、と背筋を伸ばして楽し気な声を出した。ルイスは呆れた顔をして額に手を当てた。

その青い瞳にはこの檻が見えていないのかもしれない。

「お前みたいな楽観的な性格を持つと、テロリストにでも何でもなれるんだな」

「私は革命家よ。テロリストなんて無差別殺人みたいな言い方をしないで」

「あー申し訳ない」

「ねえ、どんな婚約者だったの?」

膝に頬杖をついてシーラは尋ねる。

臙脂のワンピース、白い襟。にこにこと笑う顔と、こちらに伸ばされた手。

遥か昔の記憶。

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