シェヘラザード、静かにお休み

欲しい、と答えた。その水にどんな毒が混ざっていようと、泥水だろうと、今の喉の渇きを潤すなら何でも良かった。

渡されたペットボトルの飲み口に唇を付ける。喉を鳴らしながらそれを飲み、ボトルから手を離した。

「怖い夢でも見たの?」

女は尋ねた。それは雑談だろうか。

「私の人生で唯一幸せだった時の夢を見ていたの」

「じゃあどうして魘されていたの」

「人それぞれでしょう、恐ろしいものは」

その答えは、妙に人を納得させるものがあった。
これは、姫君だからか。それとも、人柄か。

一方シーラは、普通の水だったと安堵していた。

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