シェヘラザード、静かにお休み

シーラの前にルイスが戻り、それを視界に入れる。

視線がベッドの脚から、部屋奥の壁まで伝う。

シーラは空になった皿を放った。その音が建物内に響く。

「どうしたの?」

尋ねた。少し強い声で。

「”何か”見える?」

”何か”とは何か。青い瞳に吸い込まれそうになる。

「その蔦、いつからある?」

ルイスは視線を逸らして、ベッドの下を示す。示した瞬間、その奥にも緑が見えた。

その先を辿る。明るい緑。
緑が、壁の罅から湧いていた。

「……は?」

ルイスの口から洩れたのはそんな感想だけ。

こてんとシーラが首を傾げる。

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