ドクター時任は恋愛中毒
「類さん。私と、結婚してください」
類さんの切れ長の瞳が見開かれ、息を呑んだように喉仏が動いた。
そしてしばらくは微動だにしなかった彼だけど、突然頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
い、いったいどうしたの……?
「類さん?」
「……死にそうだ」
「えっ! だ、大丈夫ですか!? き、救急車!」
私も一緒にしゃがんで、彼の顔をのぞきこむ。
「……大丈夫だ。脳内に、ドーパミンやらエンドルフィンやらフェニルエチルアミンが大量放出されているというだけだから」
彼の口から出たカタカナ語の意味がわからずキョトンと目を瞬かせる私に、類さんが穏やかな微笑を浮かべて、短く説明を加えた。
「この上なく幸せだと、そう言ったんだ」
きゅうううう、と心臓が縮んで、こちらこそ死んでしまいそうだった。
そもそも笑顔自体がレアな彼の、しみじみ幸福そうな微笑みの破壊力ったら……!
内心悶絶する私に、彼はさらなる胸キュン砲を打ち込んでくる。
「なあ、今日は……このままお前を連れ帰っても構わないか?」
ふたりでしゃがんだまま、内緒話のようにこそっと聞かれて、その意味を悟った私はかぁぁ、と顔が熱くなった。しかし、断る理由はない。
声を発するのが恥ずかしくて、私はこくんと頷いた。
類さんはもう一度優しく微笑んでから、私の手を取って立ち上がった。