ドクター時任は恋愛中毒


あれが例の白衣の悪魔、藍澤天河ね? 確かにカッコいいけど、ああいう軟派そうなタイプは苦手……。まぁ、別に私にどう思われようと関係ないだろうけど。

私はとりあえず美琴のほうへ、手を上げながら近づいた。


「おはよう! ごめんね、けっこう待った?」

「ううん、私たちもさっき着いたの~。そしたら、天河さんの携帯に電話が……」


言いかけながら、浮かない顔で藍澤先生を見上げる美琴。自然と私も彼の方に視線を移すと、目が合った彼はちょっと気まずそうな微笑みを浮かべた。


「とにかく待ってるから、急げよ。……ああ、ちょうどいま来たとこ。超気合入れてお洒落してきてくれてるから、俺たちが目を離した隙にナンパされちゃうかもね?」


ナンパって……? なぜだか、私を見ながら言ったみたいだけど。いったい、誰と話を?

首を傾げていると、藍澤先生が通話を終えて、改めて私の方へ向き直った。そして、スマホをこちらに向けながら口を開く。


「時任のヤツ、昨夜病院に呼び出されて緊急のオペをしたらしいんだ。もちろん成功して患者さんは助かったけど、帰れたのが朝方になってからで、今起きたんだって」


緊急のオペ……! そうだよね。お医者様だもん、そういうこともあるよね。時任先生、またひとり患者さんを助けたんだ……。やっぱり尊敬しちゃうな。


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