漢江のほとりで待ってる
沈黙の中、コン、コン、と扉を軽快に叩く音がした。
入って来たのは、一条だった。
一条は、入ってすぐに美桜の存在が目に飛び込んで来たが、それを聞く前に、
「おぉ、一条!」と由弦が先に声を発した。
「よ!どうだ?具合は?」美桜が気になりながらも、由弦に声を掛けた。
「かなり、爆異的回復だよ!そこそこ歩けるようになったし」
「そうか!後遺症もないみたいでホントよかったよ!」
「一条君、久し振り」バツ悪そうに美桜は挨拶した。
「神崎、こんなとこで何やってんだ!?青木さんは?」
「あ~、何だか最近急に来なくなったんだ」と由弦。
「何で!?」
「分からないんだ」淋しそうに言う由弦。
感の良い一条は、すぐに美桜を見た。
美桜はその視線を、わざと逸らした。
「そうか、ま、彼女も働いてるから、仕事が忙しいんだろ。でもお前のことはずっと気にしてるはずだ!忘れるはずがない!」
一条は美桜の前であえてそう言った。
しばらく三人で談笑した。
「そろそろ行くわ」
一条が言った。
美桜が見送ろうとした時、一条は、首を振って外に出るよう美桜に合図した。
病室から少し離れた所で、
「神崎、何しに来たんだ?ここで一体何やってるんだ!?」
「な、何って、見ての通りユヅの看病……」
「はっ!?お前旦那どうした?家放ったらかしで毎日病院に入り浸りしてんのか?」
「……」
「もしかしてお前!」
「そ、そうだよ!別れたよ!でも元旦那さんと出会った時は、今までにいないタイプで、大人だったし、日本人にはない包容力がって、それに彼となら絶対うまくやって行けると思ったもん!」
「で、別れて独り淋しくなって、また高柳を思い出して、しかも高柳グループの御曹司と分かって手のひら返しってか!!で!?今あいつが記憶がないことをいいこに、彼女に納まってそのまま社長夫人にとか思ってる!?」
「そ、そんなんじゃない!」