漢江のほとりで待ってる
由弦はというと、一人エトワールの所へ来ていた。
「エトワール……お前は青木さんを乗せたの?オレは何も覚えていないんだ」
そう言うと背中に乗り、歩き出した。
エトワールは、由弦に案内するかのように、森をへと入って行った。
由弦が一番好きな場所へと、立ち寄った。
「うわ~!とても綺麗だ!この眺めが一番好き、」
そう言った瞬間、
「この角度が一番好きなんだ」
「ほんと!とっても綺麗!この高さだから見える景色だわ!」
以前にもここを訪れたことのあるような景色と、誰かと話す自分が頭の中に重なった。
―――― まただ!何これっ!
少し呼吸が乱れる由弦。
すると、またエトワールは先へと歩きだした。
しばらく歩くと、森の中にひっそりと立ち尽くす教会へ辿り着いた。
まだ頭がふらつく由弦。
「こんなところに教会が?エトワール、ドラキュラでも出て来そうだよ、戻ろう」
するとまた、さっきと同じ現象が頭に映し出された。
エトワールに乗って、遠くから誰かを見つめている、そして、一人の女性にゆっくり近づき、その彼女の手を引いてエトワールに乗せている。
場面が切り替わり、エトワールにその女性を乗せて、森を散策しているシーンが浮かぶ。
それから、教会なんて入ったこともないのに、自分が実際見たかのように、教会の中を見渡している、横には、顔の分からない女性が座っている。
由弦は頭を振って、映像を消そうとした。
そして、馬から降りて、教会の方へ歩いて行った。
静まり返った誰もいない、木々に囲まれた教会のドアの前までやって来た。
ふらつく足取りで、ドアノブに手をかけた。鍵はかかっていない。
ゆっくりドアを開いた。
中は薄暗く、木漏れ日だけが差し込んで、何とか中の様子が分かる程度に照らしていた。