漢江のほとりで待ってる

本家では、

「この結婚はやめるべきだ!」

弦一郎が慶太に向かって言った。

「父上!何を言い出すのですか!今更もう後には引けません!世間もこんなにも話題にしてるじゃないですか!」

「世間など関係ない!お前は一体誰と結婚をするんだ。世間か!?それにまた弟を裏切るつもりなのか!留置場で誓った思いは嘘だったのか!いい人になったつもりなのか!!青木君を取り戻して気分がいいだろう。でもその先は?お前は何を望むんだ?青木君との子供か!?彼女が拒んだら無理矢理にでも手に入れるつもりか!彼女の気持ちも知っていながら苦しめ続けるのか!何が彼女の苦しみを少しでも軽くしたいだ!何が誰かの力になりたいだ!何が誰かのために生きたいだ!お前などに分かる訳がない!!お前を暴君に育て上げたのは、私の責任だ!もしお前が強行するなら私にも考えがある!」

「やめないと言ったら?」

「仕方がない、お前は高柳から退いてもらう!!何も無しで、一から自分の力で全てやるんだな!」

「分かりました」

弦一郎の顔が慶太の言葉で強張った。

「一条君!書斎に来なさい!」

「あなた!……慶太さん」

雅羅が止めようとしたが、それも見向きもせず、弦一郎は去って行った。

一条もどうしていいか分からず、弦一郎に言われるまま、あとをついて行った。

「慶太さん、私もあなたも、一度は堕ちた人間よ。堕ちるのは簡単。そして信頼を一度でも失ったら、そう簡単には取り戻せない。勘違いしてはいけないの。私達は何も取り戻せていない。もう二度と間違ってはいけないわ!」

そう言い残して雅羅も出て行った。

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