漢江のほとりで待ってる

―――― 慶太、私は信じている。お前の本質を。お前はそんな人間じゃないと。

机に両肘を付いて、しばらく弦一郎は考え事をしていた。

ドアの前で、しばらく社長の様子を伺っていた一条。

「大丈夫ですか?社長」と声を掛けた。

「あぁ!すまない!ところで、一条君、由弦の居場所は知っているのかね?」

「はい、とりあえず」

「連絡を取ってはくれないだろうか?」

「……!?」

「こんな時に何だが、いや、こんな時だからだ、由弦に依頼を受けさせたい。大手菓子メーカーからなんだが、盗作の件で話が中断されていた、総合プロデュースを全面的に由弦にやってほしいと申し出が来ている」

由弦のために、一条は承知した。

弦一郎は、出て行く一条の背中を見送りながら、上手く行くよう願った。

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