漢江のほとりで待ってる
由弦の部屋は、椿氏の配慮で、スイートルームで当然の対応。
また一人になった由弦は、悪夢にうなされる。
決まって同じ夢。
車がぶつかって来る瞬間目を閉じる、その衝撃は体が覚えている。
次の時に目を開けると水の中。
必ず水の中で意識が戻り、もがきながら目が覚める。
「ハァ~、ハァ~、ハァ~……」
落ち着いてから、ベッドから起き上がった。
ホテルの窓から下界を見下ろした。
少し頭痛がした。
外を眺めていると、
「上手く描こうなんて思わなくていい。忘れてはいけないよ?自分の好きなことまで。自分の気持ちまで裏切るようなことはしてはいけない。君の中にある情熱は、何一つ冷めてはいない。心も体もままならなくても描き続けなさい!描き出した絵が君の全てを物語ってくれる」
祖父、椿氏の言葉が頭をかすめた。
そして、自分の部屋から持って来た、スケッチブック、ペン、筆や硯、絵皿、紙、水差し、それらを並べて眺めていた。
静かな空間に、
—————— コンコン!
ドアを叩く音が響いた。
「……!?お爺様!?」そう思って、ドアを開けてみると、そこに珉珠が立っていた。
思いもしなかった相手に、由弦はすぐドアを閉めようとすると、
「待って!」と珉珠の声に、手が止まった。
「由弦、ちゃんと話を聞いてほしい。部屋に入れてくれるまで私帰らないから!」
いつもの彼女とは違うような気がした。
真剣な目は、仕事の時とも違う、本気!?のように思えた。
何も言わず由弦は、珉珠を部屋に入れた。