キンダーガーテン 二   ~優しい居場所に~
「いらっしゃい!」

日本家屋って言葉がピッタリの先生のお家は…玄関もガラリ戸。

ベルを鳴らす先生の手が、まだ離れないうちに勢いよく開かれて迎えられた。

出てこられたのは……義姉さんみたい。

「唯ちゃん!いらっしゃい!!待ってたのよ~!!」

挨拶する間もなく、手を引かれて中に入れられてしまった。

助けを求めて先生を振り向くと

『諦めて。』って…目で答えられた。

引きずられるまま靴を脱いで……

今はリビングのソファーの上。

「暑かったでしょう?待っててね。冷たいものを持ってくるから!」

鼻歌を歌いそうなステップでキッチンに向かう義姉さんに……

後から入ってきた先生が、声をかけた。

「ただいま。………母さん。」


母さん???

ええっ!!!母さん??……!!

もしかして!!今のは………先生のお母さん??

目をパチパチさせる唯に

「あれがお袋。……ごめんね、はしゃいでて……」

えっ………あっ……………

…………挨拶!!

ピシッと立って、スーっとキッチンに移動して

「あの……私……あの。
伊藤 唯と申します。あっ…えっと…
今日は…お招き頂いて……あの…ありがとう…ございます。
あっ…あの…。
ご挨拶が遅くなって……すみません。
お母さんだと……思わなかったので………。
すみません。義姉さんだと思って………。
あの…本当にごめんなさい。
あっ…それで……………」

テンパって、シドロモドロになる唯に

「わぁ!!すっごく可愛い!!噂以上に可愛いわぁ~!
お父さん、逢えなくて残念ねぇ~」ってギュッと抱きつかれちゃった。

…………………………………………あの…………。

固まる唯と、お母さんの間に手が伸びてきて……

「困ってるだろ!…………………もぅ。
それより、冷たいものを出してくれるんじゃなかったの?」って

いつもより数段低い声で、お母さんに話しかける先生。

怖い!って思ったのは唯だけみたいで…

「悠人はケチねぇ~。
唯ちゃんだけ来れば良かったのに……」なんて、ブツブツ言いながら

キッチンに去って行くお母さん。

……………あれっ?………………いいの??………………話が途中だったような……………。

慌ててお母さんの後を追って

「あの…これ、ケーキです。お口に合うかどうか…。
あの…お手伝い……したらご迷惑ですか?」

「ええっ!一緒に?!迷惑なんてぇ~!!
わぁ~!嬉しい!!やっぱり、女の子って良いわねぇ~
お友達が、親子仲良くお料理してるのを見て…羨ましかったの。
だったら、このケーキを頂きましょう!
悠人~拓人達、呼んできて~」

「はぁ~っ。
やっぱり、兄貴達………居るのかよ………。」

「そりゃ~、居るわよ!!
美香ちゃんも唯ちゃんに逢うのを、楽しみにしてたんだから!
大樹も『花火に行くんだ!』って…張り切ってたわよ。」

「まさか……本気で預ける気じゃないだろうなぁ??」

独り言を言いながら、リビングを出てお兄さん達を迎えに行った。


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