〜starting over〜
ギターを持ち主に返して「いいギターだね」と肩を叩いて労う。
その彼は頬を上気させて「ありがとうございます!末代まで家宝にします!」とか大げさな事を言ってて、どうやらあの世代には神様みたいなものらしい。
私はと言うと、若い女の子の「カッコイイ~」という高頬させてて、ちょっとイラっ。
この位の事、誇らしいと思えなきゃ狭量よね。

玲奈と額を合わせて最後の会話をする。

「元気な赤ちゃん産んでね」
「うん……うぅぅっ……頑張るよ」
「元気で……幸せになって」
「あ……杏も……。今日は、ううぅぅぅ~……ありが……本当にありがとう……」

泣き崩れる玲奈を島田君に返すと、隣に真輝が居た。
そうだ。
居ないわけがないがないんだ。
何か言いかけた真輝。
だけど、それが叶わなかったのは湊さんが私の肩を引いて抱き寄せたから。
通常運転の不機嫌顔で、一瞥する。
真輝は、私と湊さんを交互に見て、何かを悟ったように瞠目した。

私達はミニステージでお辞儀をして、来た時同様ホテルのスタッフに護られてバンケットホールを後にした。
ホールからは、まだ興奮冷めやらぬ様子で、大きなどよめきと歓声が聞こえてくきていた。

この後、結婚式に乱入がSNSへ流出。
世間を騒がせた事は、言うまでもない。
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