イジメ返し3
「――母さん!!」

玄関先で靴を脱ぎ捨てて部屋に飛び込む。

「もうすぐ助けがくる!だから、あと少し頑張れよ!!」

正確には警察だ。でも、警察が来てこの状況をしればすぐに救急車を手配してくれるだろう。

事情をジジイに説明している余裕などなかったし、これが一番最善の方法に思えた。

「かあ……さん?」

血の海の中で母さんはピクリとも動かない。

「おい、嘘だろ……」

顔の筋肉という筋肉が痙攣をおこす。

目の奥が痛んで、目頭が熱くなる。


「母さん……」

そばまで行きひざまずいてそっと手のひらに触れる。

まだほんのりと温かい手のひらを両手で必死に温める。

「俺のせいだ……俺のせいで……」

どうしようもない悲しみが込み上げ来る。

「ハァ……ハァ……うぅ」

ボロボロと大粒の涙が頬を伝う。
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