イジメ返し3
「おじさんとおばさんは美波ちゃん一家にやられっぱなしで悔しくないの?」

「――悔しいに決まってるだろう!」

おじさんが苦痛に満ちた表情を浮かべて叫ぶ。

情緒不安定になっているのか、大きな声を上げたおじさん。

「お父さん」

隣に座るおばさんがそっと背中を撫でると、おじさんは落ち着いたのか「すみません。取り乱しました」と小さく頭を下げた。

おじさんとおばさんのことはもうすでに調査済みだ。

おじさんは元大手の銀行員。

仕事ができるのに、それをひけらかすことない人間。

元々は温和で優しく気遣いのできる性格で、周りにおじさんを嫌う人間は一人もいなかった。

おばさんは専業主婦だった。

庭でガーデニングをするのが趣味で、季節ごとに綺麗なお花を寄せ植えしていたらしい。

時間が空くと、地域のボランティアにも参加し、老人ホームへお手伝いに出たりもしていた。


休みの日は一人娘の里子ちゃんと親子3人で出かけることも多く、近所の人からは仲の良い家族と認識されていた。

近所との関係も良好。プライベートも充実していた。

それなのに、美波一家が里子ちゃんの隣家だったことが運の尽きだった。
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