イジメ返し3
「自分で……?そんなの無理に決まってる」

力なく首を横に振るおじさん。

「どうして?無理じゃないのに~」

「僕たちは里子をイジメた安西一家や学校を相手取って裁判を起こしたんだ。でも、結果は敗訴。安西美波が里子をイジメていたという証拠が得られなかった。何度あの一家に里子に謝罪してほしいと頼んでも、『お前の子が弱いから自殺したんだ。それを美波のせいにするなんてふざけてる!今度来たら逆に訴えてやる!』と言って追い返された。誰もあの一家を裁いてなんてくれないんだよ」

おじさんの言葉におばさんが同意するようにうなずいた。

二人は必死になって里子ちゃんの名誉回復に努めようとした。

娘を想い、必死になって安西一家と戦ったんだろう。

でも、あの一家から謝罪の言葉は引き出せなかった。

「おじさんもおばさんも美波ちゃん一家が憎いでしょ?カンナも同じ気持ち。カンナはママを美波ちゃんたち一家に殺されたと思ってるの。ママをイジメて追い詰めて苦しめていたぶった。あの人間の仮面をかぶった悪魔の一家をこのまま見過ごすわけにはいかない。だからねっ、イジメ返しをすることにしたの!」

「イジメ返し……?」

「そう。やられたらやり返すの。やられっぱなしなんて絶対にダメ。だってそんなの理不尽だもん。あの一家と関わり合えば自分が理不尽な目に合うって分かってるからまっとうな人間は近付こうとしないの。隣近所がすぐに引っ越したのだってそう。おじさんとおばさんがもう何を言ってもムダだってあきらめてるのもそう。あの一家には何を言ってもムダだって気付いたから。でも、そこで諦めたら里子ちゃんの死は無駄になる」

「もう私たちにできることなんてないんです……。一日が一刻も早く終わって、一日でも早くあの子のところに行ってやりたい。あの子が一人で孤独な思いをしているんじゃないかって……考えるのはそればっかり」

カンナの言葉におばさんが声を詰まらせる。
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