イジメ返し3
「やられちゃったなぁ~」

男のスマホを握り締めながらポツリと呟く。

アプリで連絡を取り合っていたのは駅前で声をかけてきたおじさんだけだと思っていたけど、違ったらしい。

美波は、今ベンチの上で寝転ぶこの男ともカンナという名前をつかって連絡を取り合っていた。

おじさんのお金を巻き上げる道具にされただけでなく、この男の下心を利用してカンナを貶めようとした。

もしかしたら他にも連絡を取り合っている相手がいるのかもしれない。

自分の手を汚さずに相手を傷つけて苦しめるのは美波が幼稚園時代から得意としてきたことだ。

美波の悪知恵は年月を重ねて更に悪質になっている。

きっと今頃ほくそ笑んでいるだろう。

カンナが男に襲われているのを想像して。

【カンナちゃん、今どこにいるの?見失っちゃったよー!】

男のスマホを操作して偽のカンナへメッセージを送る。
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