極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
高価なジュエリーは、まだわたしには早い。身につけたところで不釣り合いだ。
それでも大人びた装いには憧れる。そんな今のわたしにぴったり添うアイテムだった。
何より大好きなひとが、それをわかってくれたことが嬉しい。

「ありがとう彬良くん、大切にするね」

「どういたしまして。うんお茶おいしい。やっぱり日本の味はしみるなあ」
わたしを見る彼の目が優しい。

「そうだ、洗濯物回収しとくね」

「ありがと」

几帳面な彬良くんは、もちろんスーツケースの整理整頓も完璧で。LAUNDRYとプリントされたパッキングバッグを取り出すだけですんだ。

「あれ、彬良くん、スーツケースのベルト付けなかったの?」
スーツケースはシルバーのアルミ製の物だ。よくあるタイプだから、他の人の物と混同しないように目印にベルトを巻いていたのだけど、折りたたんで仕舞われていた。

「ニューヨークは、ベルトだめなんだって」
彬良くんが顔をしかめる。
「スーツケースの中まで開けてチェックされるから。空港で外せって言われたよ。テロ以降、とにかくセキュリティチェックが厳しくなったな」

「ひえー、厳しいね」

「やっぱりなんか目印欲しいな。受け取りレーンで迷っちゃった」

とりとめのない会話ができることが幸せだ。離れているあいだ、彼のことが恋しかったけど、こうして顔を見ると愛しさが増す。わたしには彬良くんが必要なんだって、心の底からそう思った。
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