藤堂さん家の複雑な家庭の事情

偵察①

藤堂家の長男である翡翠と、長女である心実の最終学歴は中卒。


正確に言えば、どちらも高校中退だが、最終学歴というものは「卒業」を以って言うものだから、中卒という事になる。


それでも翡翠と心実からすれば、藍子は頭が悪い。


実際3人の小学校の成績表を比べると一目瞭然で、藍子は昔から兄妹の中でダントツに成績が悪い。


翡翠や心実の場合、中学の頃から遊ぶ事に夢中になり勉強をしなくなったから成績が落ちたのだが、藍子の場合は勉強をしているにも拘わらず成績が上がらない。


むしろ落ちている傾向にある。


だから翡翠や心実からすれば、妹の藍子は「頭が悪い」の一言に尽きる。


しかし、自他共に頭が悪いと認める藍子は、それでも勉強を諦める事をしない。


どんなに勉強しても成績が上がらなければ、いい加減嫌になるのが人情というものだろうに、藍子はテストがあれば地道に勉強をし、挑む。


もちろん、毎日学校では一生懸命授業を聞いているし、ノートだってしっかり取ってある。


努力は人並み――本人としては人並み以上にしているつもり――と言える。
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