藤堂さん家の複雑な家庭の事情
直後に心実は出しっぱなしだった流しの水を止め、息子が幼稚園で作ってくれたエプロン――と言っても、無地のエプロンに絵を描いただけ――のポケットから携帯を取り出す。


そしてすぐさまメール作成の画面を開くと、兄の翡翠宛のメールを打った。


【藍子の期末テスト、来週から始まるって】


もう店に行ってるのか、それとも客と食事でもしてるのか分からない兄に、心実はそうメールを送信して携帯をポケットに仕舞う。


そのメールに対して、翡翠からの返信が送られてきたのは、それから1時間半が経ってからの事。


【了解】


たった二文字のその言葉が、藤堂家の人間がこれから始まる事態に如何に慣れているかという事を物語っている。
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