藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「やるだけやったんだろ?」

翡翠は疲れを出さないように心掛けながら優しく声を掛けた。


「うん。やった」

「なら自信持て」

「……うん」

「何だ? 何で元気がない?」

「んー、悪い点数だったらトワさんに申し訳ないなと思って」

「なぁんにも悪くない」

「でも昨日もずっと世界史教えてもらってたし――」

「トワの事は気にしなくていい! あいつは勉強を教えんのが趣味だって何回も言ってるだろ!?」

「うん」

「今までだって点数が悪くてもトワは何にも言わなかったろ!?」

「うん」

「なあんにも悪くない。な? 心実。そうだよな?」

「そうそう。惣一郎の事は藍子が気にする事ない」

「ほらみろ、藍子。心実もこう言ってるだろ? だからなあんにも気にする事はない。むしろ教えさせてやったんだから有り難いと思えくらいに思ってりゃいい」

「んー」

「藍子、聞きなさい。今まで内緒にしてたけど、トワはちょっと変わってるんだ。ありゃ性癖の一種でな? 勉強教えてると興奮す――」

「殴られたいか、クソ兄貴」
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