藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「――るのは嘘だけども、俺が言いたいのはな? トワはそれくらい勉強を教えるのが趣味って事だ。分かったか? 藍子」

「うん」

「なら、トワの事は気にすんな。いいな?」

「はーい」

「よし、じゃあさっさと飯を食いなさい」

「はーい」

再び朝食を食べ始めた藍子を見守る家族達が、こうして食卓に集っている意味はそう大してない。


藍子を見ながら、何でこんなに食べるのが遅いんだろう!と改めて思うくらいの意味しかない。


特に何も言わない琢は、いてもいなくても一緒と言っても過言ではない。


それでも琢は家の中に漂う雰囲気から、悠長にテレビを見ている場合ではない事を察している。


こうしてこの場にいる事が、家族として当然の行動だと思っている。


そしてこの後、藍子が制服に着替る為に部屋に向かうと、母親の心実が忙しなく動き始め、リビングがバタバタとし始める事も「藤堂家の当然」だと思っている。
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