藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「え? 何?」

何か伝えようとしてるんだって事は分かるんだけど、何を言ってるのか全然分からない。


そしてそれが「ヤバい」と何度も繰り返してるんだと分かった時にはもう手遅れで――。


「藍子! あんたこんな時間までどこほっつき歩いてんの!」

琢ちゃんの後ろから、お姉ちゃんが鬼の形相でリビングから出てきた。


「ど、どこってお兄ちゃんのお店に――って、昨日行くって言ったよね?」

「スーツ持ってくだけで何でこんなに遅くなんのよ! 夕方行くって言ってたでしょ!」

「そ、それは色々と事情が……」

「はあ!?」

「事情が……」

「言い訳する気!?」

「……ごめんなさい」

「後5分遅かったら警察に連絡してたよ!」

「な、何で警察!?」

「あんたが電話に出ないからでしょ!」

「電話?」

「何回携帯に電話したと思ってんの!?」

「えっ、嘘!? 鳴ってな――あっ! マナーモードになってた!」
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