藤堂さん家の複雑な家庭の事情
たまに仕草が似てる時もあったりするから、一緒に住んでるって事の影響力に驚かされる。


ただ、顔がお姉ちゃんで仕草がお兄ちゃんっていうのは、あたしからしてみれば可笑しくって仕方ない。


「何笑ってんの?」

「琢ちゃんって、お姉ちゃんに似てるなって思って」

「そりゃ似てるだろ。親子なんだから」

「うん。そうだけど、すっごく似てるから」

「男は母親に似て、女は父親に似るんだって園長先生が言ってた」

「でもお兄ちゃんはお父さんに似てるよ?」

「お父さんって祖父《じい》ちゃん?」

「うん。琢ちゃんのお祖父ちゃん」

「オレ、写真でしか見た事ないからあんま分かんねえ」

「琢ちゃん生まれた時はもういなかったもんね」

「翡翠君、そんなに祖父ちゃんに似てる?」

「うん。お祖父ちゃんに似たからあんなに美形なんだよ」

「んじゃ、母ちゃんも祖父ちゃん似? オレの母ちゃんは『べっぴん』ってやつだって、隣のおじさんが言ってた」

「うん。そうだよ。お姉ちゃんもお祖父ちゃんに似てる」

「藍子は祖父ちゃんに似なかったんだな」

「琢ちゃん、それはどういう意味なんだろうか」

「可哀想にな。祖母《ばあ》ちゃん似なんだな」

「可哀想にって何がだろうか」
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