藤堂さん家の複雑な家庭の事情
心実の過去

幸せを思う時

時折ふと、嗚呼《ああ》幸せだな――と、感じる時がある。


ちょうど今もそんな感じだった。


昼食の後片付けを終え、誰もいないリビングのソファに座って、珈琲を飲みながら昼ドラを見てた時、ふとそう思った。


琢は昼食を食べ終わってすぐに友達の家に遊びに行った。


藍子は夏休みの補習の日程をやっと消化し終わって朝から友達とプールに行ってる。


兄の翡翠はいつものように二階で眠ってて、当分起きてくる事はない。


でも、だから幸せを感じた訳じゃない。


普段騒がしい家の中でひとりになれたからって理由じゃない。


幸せを感じる時は、いつも状況は違う。


慌ただしい朝の一時とか、洗濯物を取り込んでる時とか、夕食を作ってる時とか、布団に入って「さあ、眠ろう」って時とか。


その時によって状況は全然違う。


その時々によって一緒にいる相手も違う。


でも必ずと言っていいほど、それは家の中で感じる。


それを不思議に思う。
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