藤堂さん家の複雑な家庭の事情

幸せ

携帯の着信音で、ハッと目を覚ました。


一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。


リビングのソファに座って、昔の事を思い返しながら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。


体を起こしてテーブルに置いてあった携帯を手に取ると、着信相手である惣一郎の名前が画面に出てた。


『おはよ』

通話ボタンを押した途端、いつもの挨拶が聞こえてくる。


今日はあたしも寝起きだから「おはよ」と返事をした。


『あれ? 心実どうかした?』

「何が?」

『声が変だけど……』

「あー、うん。テレビ見ながら寝ちゃってて、今起きた」

『ごめん。俺の電話で起こしちゃった?』

「謝る事じゃないよ。どうせ起きなきゃなんないんだし。まだ家事が残ってる」

『今日の買い物は?』

「まだだけど、後で行ってくる」

『一緒に行こう。シャワー浴びたらそっち行くから』

「惣一郎、今日遅番だっけ?」

『そうだよ』
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