吐露するキズ跡
「…あいつ、着替えるとこわかるかな。…見て来よう…」

「じゃあ、オレ、羽のベース運んどくわ」

羽の背中にトウゴが言う。

それから、

「…一緒に来る?」

あたしに言う。

ちょっと、意味深な表情。

…怖いけど

「ここにいても、知り合いすらいないんだろ?」

車まで、楽器を取りに行く。

「オレが出張中、羽、元気だった?」

…やっぱりきたか。

って思った。

泊まってよいと許可はもらったけど、朝も会ってないし、結局あれ以来会うのは初だ。

でも、このまま何も訊かれないですむとは思えなかった。

「一緒に飲んでたんだけど、すぐに眠いって寝ちゃって。その後、…あたし一人で飲んでました。あ、ごめんなさ
い。ビールまだ返してない」

羽ように買ってあったビールを数本いただいちゃったので、それを報告して、また返します~ってメールはした。

「いいよ。ビールくらい勝手に飲んでくれて構わないよ。羽が良ければ、うちに入っても構わないし」

…淡々としゃべってるトウゴ。その口調、ちょっと、怖いかな。

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