ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「わ、誰か来ましたよ。下ろしてください……!」
前もこんなやりとりをしたなと思いながらじたばたしていると、扉が開かれる。
「副社長、失礼します」
部屋に入ってきたのは、眼鏡をかけた真面目そうな四十代のスーツ姿の男性。清瀬さんの秘書の遠山さんだ。
彼はいつも冷静沈着だ。スイートルームのダイニングで、清瀬さんの膝の上に横抱きにされて涙目になっている私を見ても、動揺するそぶりもない。
「お食事中でしたか」
テーブルを見てから私に向けて「夏目様、おはようございます」と穏やかな笑みを向けてくれる。
この状況で朝の挨拶をされるなんて、いたたまれなくてしかたない。
「清瀬さん、下ろしてくださいっ」
膝の上で甘やかされているところを誰かに見られてしまったのが恥ずかしくてもがいたけれど、清瀬さんは私を膝の上から降ろそうとしない。
「今日は休日のはずだが?」
一応このスイートルームは執務室を兼ねてはいるけど清瀬さんの自宅でもある。勤務時間外になにをしようと文句を言われる筋合いはないんだろうけど、それでも秘書にこんなところを見られて平然としている清瀬さんもどうなんだろうと思ってしまう。
「申し訳ありません。三木のことですが、夏目様が余計な心配をなさらないようにとり急ぎご説明したほうがいいかと思いまして」
三木さんの名前を出され、思わず肩が強張る。
それに気づいた清瀬さんが、私の肩を抱きながら遠山さんに視線を向ける。