ホテル御曹司が甘くてイジワルです

しばらくすると新郎の康介さんに付き添われて星奈さんが階段を下りてきた。

「長谷さん、夏目さん、これから模擬挙式なのにすみません……」

心配してかけよった私たちにむかって、ふたりが申し訳なさそうに頭をさげる。

「いえ、挙式よりもお腹の赤ちゃんの方がずっと大切ですから」

星奈さんの手をぎゅっと握って言うと、力強く頷いてくれた。星奈さんはもうお腹の子を守る強い母の顔をしていた。

パーティーに出席しているお客様に気付かれないようにそっとふたりを見送ってから腕を組む。

「新郎新婦がいなくなってしまったね」
「どうしましょう」

長谷館長とふたりで顔を見合わせていると、清瀬さんが私の隣に立った。

「じゃあ、俺たちが結婚するか」
「え?」

さらりと言われた言葉に、聞き間違えかな?と思って聞き返す。

「いなくなった新郎新婦のかわりに、俺たちが式をあげればいい」
「ええ?」

きょとんとしている私に、清瀬さんがいたずらっぽく笑った。


< 255 / 278 >

この作品をシェア

pagetop