ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

「いや、例のプラネタリウムの報告書を見ていたんだが……。遠山はどう思う?」
「そうですね。もってあと一、二年というところでしょうかね」

私の言葉を聞いてあからさまに顔をしかめた副社長に、「どれくらいでつぶれるか、賭けでもしますか?」なんて軽口を叩く。

「いや、やめておく」

副社長は首を左右に振ってからまた考え込む。


その副社長の難しい顔を眺めながら、先日プラネタリウムのドームの中で見た、星座解説をする女性の姿を思い出す。

このままあのプラネタリウムが潰れれば、彼女の職場がなくなってしまう。
それを、なにもしないで見ているのは歯がゆいのだろう。

できれば彼女のためにあの場所を残してあげられれば、なんて考えているに違いない。


「『坂の上天球館』をつぶしたくないのなら、プレアデスグループで買収すればよろしいと思いますが」


 
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