冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
私は温まってきた携帯を反対の手に持ち替え、コーヒーカップに手を伸ばした。ジョージさんは持ち前の深みのある甘い声で、歌うように続けた。


『舞塚はかつてソレイユのもっとも手強いライバルだった会社です。今はだいぶ引き離し、敵とはみなしていませんが。エムズグループといえばわかるでしょう?』

「ああ……!」


新聞社を母体とし、人材業界にも手を伸ばしている、かなり古くからある巨大グループだ。そういえばエムズに名称変更する前は、舞塚グループと名乗っていた気がする。


『しかもですね、件の祥子嬢は、弊社でお預かりしています』

「は?」

『見た名前だと思って、電話中に確かめさせました。まさに今、僕のいるこのソレイユ本社で、受付カウンターの中に立っています。舞塚社長から修行させてやってくれと頼まれまして。僕がじゃなく、狭間社長がですがね、もちろん』


ぽかんと口を開け、コーヒーを飲むのも忘れた。

これは、灯台下暗しと呼んで正しいのだろうか。



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