その花が永遠に咲き続けますように
「咲、大丈夫だよ。俺、死んだりはしないよ」

永君が、ちょっと呆れながらフッと笑う。
そんな笑顔にすら、安心して、心から満たされるような感覚になる。



「そうだな……生きてるもんな」

ぽつりとそう呟く武入君の声も震えていた。平気な顔しながらも鼻を啜るのがわかり、彼も涙もろいのかな、なんて思った。


「ほんと、昔からすぐ泣くよね」

「うっせえ。そういう瑠夏こそ涙目じゃねーか」

「そっ、そんなことないし!」

「私は、咲ちゃんにつられて完全に涙止まらないよ〜」


気付いたら、私だけじゃなく皆が涙を流していた。当の本人の永君だけが、そんな私達を笑いながら見ている。


でも決して、悲しい涙じゃない。
生きてて良かったという安心の涙。


そして、同時に気付く。


彼を失ったらと考えた時の底知れない恐怖。目の前で生きてくれている安堵感。これは……きっとただの友情なんかじゃない。


友情じゃなくて……



友情じゃないのなら……



やっぱり、私は彼のことをーー。





その後、いつまでも病室にいるのは永君の迷惑になるだろうということで、私達四人は揃って病院を後にした。ここからだと電車で帰ることになるため、駅へと向かう。


「病院出る前に本人からこっそり聞いたんだけど、経過次第では割とすぐ退院出来るって言ってた」

安心しているような、少し悲しそうなような、そんな複雑な顔で武入君が言った。


「こんなこと聞いていいのかわからないけど、また歩けるようになるの? それとも……」

「それは本人にもわからないってさ」

「そっか」

武入君と瑠夏の会話を聞きながら、私はここにいる誰とも違うことを考えていた。


それは、曲のことだった。今考えるべきことではないと思う。だけどーー。
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