その花が永遠に咲き続けますように
「でも、洋さんってちょっと不思議だね」

「不思議?」

「永君のこと、凄く大事に思ってるよね。いや、兄弟なんだから当たり前かもしれないけど、初対面の私にも『永と組むなら半端は許さない』って正面から言ってくるところとか、普通の兄弟よりも愛情がはっきりとしてるなーって」

私がそう言うと、永君は一瞬だけ、顔を曇らせた……ように見えた。


「永君?」

「え、ああ。まあ兄貴もさ、普段は優しいし、俺に対してもあんなんじゃないよ。ただ単純に音楽のことになると熱くなっちゃうっていうかさ。兄貴も音楽好きだから」


笑いながらそう答えてくれるけれど、その笑い方はいつもの飄々としたものとも、今日何度か見せてもらった心からの笑顔とも違って、言い方は悪いけれど嘘くさい笑顔だった。


だけどまさかそんなこと言えず。彼が何かを隠しているのだろうなということはわかったけれど、誰にだって触れてほしくないことはあるだろうし、それ以上は気にしないことにした。



「じゃあな、咲。また明日」

駅に着いたところで、永君が私に言った。

しまった。つい当然の様にここまで送ってもらってしまった。永君は自転車だし、帰り道はこっちじゃなかったかもしれないのに。


「永君の家、どっち⁉︎」

慌てて聞くと、彼は「え?」と聞き返してから、「あっち」と、今歩いてきた方向を指差した。


「あぁ〜、ごめん。気を遣って送ってくれたんだね。遠回りさせて本当に申し訳ない……」

がっくりと肩を落として謝ると、永君はあははと声に出して笑った。


「俺がスタジオまで連れてったせいで帰りが遅くなったしな。もう暗いし、やっぱ女の子一人で歩くのは危ないし」
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