その花が永遠に咲き続けますように
「今歌ってる人達、上手いな」

耳を澄ませながら永君が言う。
ここはステージ裏だから歌っている人の姿は見えないけれど、今歌っているのは、確か三年生の男女混合バンド。
確かに上手い。声に伸びがあるし、今までのどの組よりも明らかにお客さんが盛り上がっている。


「この人達の後に歌うなんて……プレッシャーだなぁ……」

せっかく盛り上がった空気を、私が盛り下げて、台無しにしてしまうかもしれない。そう思うと、緊張が増した。


「え、何言ってんの咲」

彼のその言葉は、今更ビビってんなよ、という意味の渇かと思ったけれど、違って。



「お前の方が上手いから」



たった一言のその言葉が、私の心臓を、全身を、熱くさせる。



「ほんと?」

「え、ほんとだよ」

「適当に励ましてる訳じゃなく?」

「俺は嘘は言わないっつの」

言いながら、永君が右手を軽く挙げた。そして。


「楽しんでいこーぜ。〝一組の相澤と八組の吉宮〟、一周回ってかっちょいい名前だと思うぜ、俺は」

「あはは。かっちょよくはないわ。断じて」


だけど



「うん、楽しんでいこーぜ」


頷いて、彼の右手に私の右手をパチンと合わせた。そのハイタッチをしたのと同時に、前の組の演奏が終わった。お客さんの方からは今までで一番の盛大な拍手が聞こえてきた。


いよいよ、私達がステージに上がる。
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