その花が永遠に咲き続けますように
「でもまあ、肝心なのは衣装でもバンド名でもなく、どんな音楽を演奏するかだよな」

「そうだね」

無理やりポジティブに考えれば、着慣れない衣装に身を包むより、着慣れた制服の方がいつも通りの演奏が出来る気がした。バンド名に関しては流石にダサ過ぎる気も否めないけれど。


「そうだ。打ち込みの準備しないと」

そう言って永君はスマホを取り出す。


そう。ここ数日で、ドラマやベース等、私達が演奏しない音の打ち込みを、なんと洋さんが用意してくれたのだ。
ギター伴奏のみでも勿論悪くはなかったけれど、確かに打ち込みを含んだ方が、文化祭で盛り上がるには丁度良い。お陰で私達の演奏に迫力が増した。


だけど、ここまでしてもらってしまい、洋さんには本当に頭が上がらない。洋さんは『永には半端なステージに立ってほしくないからだ』とあくまで永君の為だと言い張り、永君は『兄貴も音楽好きだし、打ち込みもなんやかんやで楽しんでるだけだから気にしなくていいよ』と言ってくれたけれど。



なんやかんやと話していると、いつの間にか私達の直前の組がステージで歌い出した。この人達が歌い終わったら、すぐに私達の番だ……!



ここまできてしまったら、今更どうしようなどと言っていても仕方がない。なるようになれと、腹を括らなければ。



……と思うのに、やっぱりどうしても緊張してしまう。
< 58 / 183 >

この作品をシェア

pagetop