その花が永遠に咲き続けますように
「まあ、俺もよくわからないんだけどね」

そう言いながら、その手はすぐに離れた。

だから手を繋がれたのはほんの二秒くらい。
だけどその二秒がまるで永遠かと思えるくらい、驚きすぎて固まってしまった。


でも、驚いたけれど嫌ではなかった。



そうしてしばらくいつもの道を歩いていき、信号で足を止めた。


今日はほんとに楽しかったなと、隣に立つ彼に言われ、うん、と返した。


本当に、凄く楽しかった。緊張もしたけれど、ステージに立って歌い出す瞬間、それまでの緊張はどこかへ吹き飛んだ。
歌うことの楽しさと感動を改めて思い知った。



「……永君」


だから私は、感謝の気持ちを彼に伝えようとした。文化祭でバンドをやろうと永君が誘ってくれたから、今こんなに幸せな気持ちでいられるから。


「永君、今日はほんとにありがーー」

「ありがとうな、咲」


……え?

私の声に被さるようにしてそう口にした彼を見つめながら、思わず首を傾げる。


すると彼も私を、とても優しい表情で見つめ返してきて、


「俺と一緒に演奏してくれて、本当にありがとう」


と言ってきた。



「何で? お礼を言うのは私の方だよ。私から誘ったんだし」

「はは。でも俺もずっとこういうのやりたかったし。咲のお陰でそれが出来た。本当にありがとう」


そんな風に真面目にお礼を言われてしまったら、恥ずかしいのと照れ臭いのとで何て返したらいいかわからない。


どう答えるべきかしばらく考えた後、私は。
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