珈琲プリンスと苦い恋の始まり
山本さんを見返すと、まるで頼み込むような姿勢でいる。これ以上、社のコンセプトを前面に押し出したところで素直に聞いて貰えるような雰囲気でもない。


天井を仰ぎ見て、う~ん…と迷った。

この店で起きたことの責任は全て俺に一任されている。
社としても、この様な出店は初で、何もかもがやってみないことには、成功か失敗かも分からない。



(……さて、どうするか)


腕を組んで目を閉じた。
瞼の裏では、俺がこの店を失敗して、次の手を楽しみに待ち構える父の姿が浮かんでいた。



あの傲慢な親父の鼻を明かしてやりたい。

そして、次こそは自分の思う仕事をやらせ欲しい、と声高らかに宣言してみたいもんだ。


そう思うと、むくむくとやる気が湧き出す。
もしかすると、これがチャンスの一端になりはしないだろうか。




「……分かりました」


そう言いながら瞼を上げる。

俺を視界に捉えた山本さんはぱぁっと表情を明るくして、大きく目を見開いた。


「取りあえずは、センター長さんに会って話を聞いてみようと思います。出来るかどうかは、そのお話次第ということでいいですか?」


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