珈琲プリンスと苦い恋の始まり

(古民家カフェか…)


今更ながら彼女の発想力に感心する。
パッと室内を見ただけでそう思える彼女の思考力を素晴らしいと思え、その発想力で撮った写真集がどんなものかが気になった。


(あの桜の写真みたいに風景が主なんだろうか)


表紙にはタイトルの様に『SAKURA』とネームが入っていただけだった。
淡いパステルカラーの色調で、それに溶け込む様な白い文字が印刷されているだけ。

それだけでは中身の想像が出来ないが、会議室で発言した時の様な凛とした雰囲気とは違い、彼女の柔らかさと言うか、儚いような優しさを感じた。


(フォトライターか…)


せっせと利用者の間で体温や血圧を測っていた姿からは想像しにくい副業だ。

絵葉書のように写真に言葉を添えると聞いたが、その言葉を彼女はどんな風に選んでいるのだろうか。


単なるインスピレーションなんだろうか。
だとしたら、どうしてあの桜の写真が「祖母」になるのだろうか……。



漂う珈琲の香りに包まれながら、自分もまったりと考え事をした。

『古民家カフェ 悠々』で過ごす時間は、俺にとってもホッとする瞬間に変わろうとしていた___。


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