珈琲プリンスと苦い恋の始まり
横顔と後ろ姿
「それじゃお借りしていきます」


写真集を手に玄関ドアを潜り抜ける。

ドアから少し離れた場所では送迎用のバスが停まっていて、それに乗り込む利用者達の足元を彼女が心配そうに見つめている。

その姿からは想像出来ないような写真を期待しながら車に乗り込む。そのまま店へと戻り、掛け看板を『open』に返しながらカウンターへと向かい、自分の為に特別な珈琲を淹れ始めた。


カップにそれを注いで一口飲む。
それから息を深く吐き出して、ようやく写真集と向かい合った。



『この一冊を亡き祖父母に捧ぐ』


表紙を開くと、真っ青な空色の中に漂う一文が綴られてある。

表紙と同じ様に色に溶け込みそうな白くて儚い文字は、何故か俺の心をきゅっと締め付けさせた。


戸惑いながらページを捲ると、じっと空を見上げる白黒の猫の後ろ頭が写し出されている。


『どこ?』と添えられた文字から察して、何かを探しているんだというのが分かり、それが一番最初に綴られていた言葉の意味と重なった。


『亡き祖父母』とあったが、彼女は猫の目を通して自分の心とリンクさせてるのではないか。

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