珈琲プリンスと苦い恋の始まり
残された俺は、古民家カフェ『White moon』の資料を手にしてソファに座る。

じっくりとそれを読み込んだ後で、両手で丸めてしまいたい気持ちを堪え、「ふぅ…」と大きな溜息を吐いた。



「やるしか無いか…」


次期社長の椅子は兄貴だと決まってる。
次男の俺は、父のいい様にこき使われるだけの存在だ。


「この店が成功したら、次こそは自分のやりたい仕事をさせて貰うぞ」


見てろよ、と意思を固めて社長室を出た。

それは今から二週間ほど前のことだ___。

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出店先に赴任してから一週間後、古民家珈琲店『White moon』はオープンした。


田舎町の寂れた民家は、一応のリフォームがしてあり、外観はその家の雰囲気を丸まま残し、内装には取りあえずな感じの杉板が貼られてある。


店の存在を知らせる木の看板は国道沿いに転々と置かれ、それに白い文字でかかれてあるのは『coffee』の文字のみ。


一見して(こんなので客が来るのか?)と疑った。

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