珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「仮にも飲食店なんだ。腐食の原因となりそうなものは全て排除する様に、と指示した」


「成功するのか?相当な田舎みたいだぞ」


懸念を示す俺に父はスマイルを浮かべた。


「その点についても調査済みだ。資料を見れば分かると思うが、ここは国道沿いにある家で、半径三十分以内には有名な観光名所が三つもある。

そのうちの一つは外国のメディアにも紹介されているらしくて、観光客は年々うなぎ登りだそうだ。

しかも、まだ未開拓地域で飲食店舗も少ない。
競争相手のいない地域への出店は、早い方が勝ちと決まってる」


「それはつまり、失敗するなとプレッシャーを掛けてるのか」


「そう取りたければ好きにしろ。兎に角、お前の手腕で上手く経営を乗せていって欲しい」


頼んだぞ、と席を立ち、肩に手を乗せる父の顔を見遣る。
心の中では(俺はあんたの操り人形かよ)と冷めた思いが渦巻いた。


「……まぁせいぜい頑張ってくるよ」


生まれながらの負けず嫌いでそう言った。
父はほくそ笑みながら「頼むぞ」と肩を叩き、会議へ行く…と部屋を出た。


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