珈琲プリンスと苦い恋の始まり
それを聞いて、俺は山本さんが言っていた言葉を思い出し、あの雨の日に着ていたカメラマンベストのことを言ってるんだ…と気付いた。



「それでも十分気をつけて行きなさいよ」


「何かあったら連絡してくるように」


「ありがとう。その時はお願いします」



根負けしたように彼女は深く頭を下げて項垂れる。

口煩いおばさん連中の思いを汲み取り、素直に言うことに従う姿を見遣りながら、俺は改めて(いい子なんだな)と思い直した。


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「……と言うことだから、後は頼むよ。マスター」


「情報料」と掌を見せる山本さんの顔を眺め、「何のことでしょうか?」と首を傾げた。


「またまた〜、惚けちゃって。私、聞いたんだよ、事務所の西田さんから。愛花ちゃんの写真集をマスターが借りて帰ったって。
…それでもう見たの?見たらあの子に興味が湧いたでしょ?」


ニヤつきながら「だから」と言ってくる。

眉間に皺を寄せつつ、どういう意味ですか?ともう一度訊ねると、「撮影する場所教えたでしょ」と微笑まれた。


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