その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ


「……来ない」

十八時を過ぎても、課長は来ない。

仕事が終わった、というメッセージは十六時頃に届いた。会社からこの家まで、たとえケーキを買ってきたとしても二時間も掛からない。


私から〝いつ到着しますか?〟と聞くのは、何だか彼を待ち侘びているみたいでしたくなかったけれど……そろそろ連絡してみようか?


それとも、もうすぐそこまで来てるのかな?


とりあえず玄関の扉を開けて、外の様子を見てみる。

その時。


「え?」


外側のドアノブに、何かが引っ掛かっているのを発見した。

手提げの紙袋だ。


もしかして、と思って中身を見てみれば、明らかにケーキの箱が入っていて、更に箱の中身を確認すると、美味しそうなショートケーキが一つ入っていた。


私は慌てて課長に電話を掛けると、彼はすぐに通話に出た。


【もしもし?】

「も、もしもしじゃないですよ。今どこにいるんですか」

【どこって……もうとっくに自分の家だけど】

「う、うちに来るんじゃなかったんですか?」

彼の考えていることが全く読めなくて、私は思わず動揺している。

単純に私の家に来たくなくなって来なかったのなら構わないけれど……じゃあこのケーキは何? 私の為に買ってきてくれたんだよね……?
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