惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
兄の疑問を陽介さんが頑として否定した。
本気で私と……?
すぐには信じられないようなことを聞かされて茫然とする。
私と同様に呆けたように突っ立つ兄に「失礼します」とひと言断り、陽介さんが私の前に立った。
「香奈」
「……はい」
返事をするのがやっと。
陽介さんは私の手を取り、そっと握り締めた。
「香奈のことは本気だ。彼氏のふりをしたことは一度もない」
初めから恋人として考えていてくれたの? 期限も“ふり”もない、正真正銘の恋人として?
それじゃ、私のことを『好き』と言ってくれたのは、雰囲気を盛り上げるためじゃなかったんだ……。
「こうなる前から香奈のことが気になっていたんだ」
「えっ?」
それは意外すぎる告白だった。