惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

ところが、私の質問に兄の顔色がみるみる曇っていく。

え? まさか……。嘘でしょ……?

今日二度目の嫌な予感が私の胸に押し寄せる。


「もしかして……」
「昨日、振られたよ。はぁ……」


大きなため息とともに兄ががっくりと肩を落とすと、色素の薄いサラサラの髪が額に掛かった。

私の心配はみごと的中。聞かなくても見当はつくけれど……。


「理由は?」
「『私のことを本当に好きなの? 私と妹さんとどっちが大事なの?』って聞かれたよ」


ため息交じりに首を振りながら残念そうに言うけれど、そんな質問を引き出したのは紛れもなく兄だろう。


「……それで、なんて答えたの?」


これもまた、聞かなくても想像がつくのが怖い。


「そんなのもちろん『香奈だ』って答えたよ。当然じゃないか、世界でただひとりのかわいいかわいい妹なんだから」

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