惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
これまでに彼氏ができたことはあったものの、兄の過剰すぎる干渉に嫌気がさして、私から離れていった。社会人になってからは、それが怖くて恋愛に臆病になっている。
「でも、俺には目に入れても痛くないくらいかわいい香奈がいるしね」
超特急で気持ちを切り替えた兄が私に笑いかける。失恋の痛手はどこにいったのだろう。
「そういえば、この近くのマンションで空き巣があったそうだから、香奈も気をつけるんだぞ。戸締りはしっかりすること。……あ、心配だからお兄ちゃんの部屋にしばらく来るか? うん、それがいいかもしれないな。香奈になにかあったら、それこそお兄ちゃんは生きていけないぞ?」
兄をつい冷めた目で見つめる。
「……ねぇ、お兄ちゃん、私は妹だよ?」
「そんなのわかっているさ。香奈が妹じゃなかったら、なんだと言うんだい?」
肩を軽く上げて、兄はおどけた顔をした。そんな仕草ですら決まっているなんて、宝の持ち腐れ。それは私じゃなく、別の相手に向けるべき。
「だからね、恋人にはなれないし結婚もできないの」