私の本音は、あなたの為に。
そして、私は一言つけ加えた。


「五十嵐、ああやって言ってくれてありがとう。…どうなるか本当に分からないけど…でも、事が良い方向に運ばれるって信じたい」


ママと私の関係が悪化しても、五十嵐の事は責めないから、と念を押すと。


「もし失敗したら、例の30秒ハグする?」


私の肩を掴んだ五十嵐は、私の目を覗き込みながらそう聞いてきた。


(五十嵐、さすが)


「…良いね、やろう」


私は、ふっと笑ってそれに応えた。



そんな話をしているうちに、30秒以上は軽く経過していて。


「五十嵐、もう大丈夫でしょ?」


五十嵐の背中で絡めた自分の手を解きながら私がそう言うと、


「うん、大丈夫だけどさ……はあ、宮園にも言わないと…」


床に落ちたリュックを拾い上げながら、彼は何故かため息をついた。


「えっ?」


(花恋?)


その言葉が何を指しているのか分からない私がそう声を漏らすと、五十嵐は顔の前でひらひらと手を振った。


「何でもない。お母さんにカミングアウトする日程とか、連絡して。…頑張って読むから、メールでもいいよ……あと、今日はこちらこそありがと」


そう言いながら既に歩き始めた五十嵐に、私は笑って手を振った。


「分かった」
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