私の本音は、あなたの為に。
花恋の思いは、私はもう汲み取れない。


ママが私－勇也－の事を見てくれれば、もうそれで良い。



｢花恋、私は大丈夫だから｣


精一杯絞り出したこの言葉の本当の意味を、花恋は分かってくれるだろうか。


｢っ……うん。なら、良かった｣


花恋は何か言いたそうにしながらも、必死にそれを飲み込む。


｢じゃあね、花恋｣


マンションのエントランスの中に入った私は、花恋に手を振る。


｢バイバイ、また明日ね｣


花恋も私に手を振り返し、くるりと私に背を向けた。



花恋が私の視界から消えた途端、自分の眼光が鋭くなるのが分かった。


(私は男、私は男)


(私は優希じゃない、私は勇也)


そう自分に言い聞かせながらエレベーターに乗り込み、6階へ向かう。


ママが家に居ようが居まいが、そんな事は関係ない。


家に行くという事が、私が男になるということを表しているのだから。


｢ただいまー｣


玄関を開けて声を張り上げるものの、案の定ママの姿は見当たらなかった。


真っ暗な室内の電気を付け、自分の部屋に荷物を置いた私はリビングへと向かう。


テーブルに、ママからの書き置きが置いてあった。
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