私の本音は、あなたの為に。
「黙るのはそっちでしょ?私、佐々木の言ってた言葉覚えてるんだけど?」


花恋が、渾身の一言を言い放った。


もう私達の圧勝だという事は、誰の目にも明らかで。


「えっ……」


佐々木は、驚きの余り声を無くして。


「あれ程お兄ちゃんを侮辱するなって、言ったよな!?」


私も震える声でそう言う。


「……」


「何で懲りないんだよ、こいつ……!」


私の魂の叫びは、応接室の中の人の心に吸い込まれていった。




「…よし、じゃあ2人は帰っていいよ」


あの口論からしばらくして、私と花恋の2人は帰っても良い事になった。


残された佐々木は、岩下先生がみっちり叱るそうだ。


もしかしたら、佐々木は私の兄を侮辱したり酷い言葉で私をからかったりしたから、反省文行きになるかもしれない。


(まあ、仕方ないよね…)


「「さようなら…」」


私達は、入って来た時と同じ様に揃って廊下に出た。



もう衣替えの季節で外は暑くなってきているというのに、廊下は静まり返って涼しげな空気をまとっていた。


私達は会話をしないで靴を履き替え、校門を出る。


そこで、花恋がためらいがちに口を開いた。


「仲直り、してもいいかな…?」


私は立ち止まり、花恋を穴の開く程見つめた。
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